FIFA大会という名の青春(後編)
午前11時。続々と友達が我が家にやってくる。時間を加味して持ち帰り用の牛丼を買ってくる人もいれば寝坊して遅れてやってくる人もいた。
12時にキックオフしようと約束していたが、なかなか全員が揃わない。
思い返してみれば約束の時間通りに始まったことなど一度もない。遅延なり寝坊なりの出来事があるためおよそ1時間ほど遅れてスタートするのが常だった。そして今回も同じく1時間ほど遅れてスタートした。
今大会が7回目という比較的お馴染みとなってきたこの大会だが今回は雰囲気が少し違う。それは最後の大会だから感じるものだろう。
試合は順調に進行されていく。勝利して雄叫びを上げる者もいれば負けて筆者のベッドに崩れ落ちる者もいる。風呂入ってないのに。
数試合が終われば自分の勝ち点が周りと比べて高いのか低いのかがわかるようになってくる。それをみて喜びだし、またはもうダメだと諦めかけるものも出てくる。
しかしあくまでもこれはゲーム。予想できないことが起こる。
これまで下位の常連で毎回賞金を払う側だった者が上位に躍り出て、これまでの上位の常連が最下位レースに陥落してしまう事態が起きてきたのだ。
これまでは7回も開催しているために各友人の強さ、予想順位というのはある程度予測ができていた。
けど今回は違った。みんなが想定する「こいつを倒して勝ち点を稼ぐ」という「こいつ」が強かったのだ。ボールは取られないしパスをどんどんつなぐ。そして正確なシュートでゴールを決める。最後の大会にダークホースが出現したのだ。
みんなのスイッチが一気に変わった。
「このままだとお金を払う羽目になる」、「今回は誰が負けるかわからない」、そういう状況に変わったのだ。
そんな状況のまま試合は進み最後の試合を迎える。
筆者と2位との対戦。筆者はこの時点で1位。この試合に勝つか引き分けるかで優勝だが、負けると3位に転落する。賞金にして7千円か5千円かの違いだ。
...負けたくない!負けるわけにはいかない!
結果として、筆者は優勝した。その試合は引き分けに終わったものの順位は変わらず1位となり優勝という結果と7千円得ることができた。
これで前回も優勝しているので2連覇となった。雄叫びをあげたかったが家主として下の階に住む人のことを考慮しそっと「フーッ」と息を吐くに留めた。
1位になれたのはもちろん嬉しいがそれよりもお金が入ってくるのが嬉しい!なんせゲームをやったらお金がもらえるんだもん。こんな楽なことはないよね!楽ではなかったけど。
優勝特典はFIFA大会メンバーが所属するグループラインがあるのだが、そのグループのアイコンに自分の画像を使ってもらえるのだ。毎回優勝者は自分の写真を撮ってもらいその写真をアイコンに設定することがルールとなっている。
今回は写真に写る人物は変わらないまま別の写真がアイコンとなった。ここまで来ると心から「頑張ってよかったな」と思える。形として残るから。
こうして学生生活最後のFIFA大会が幕を閉じた。
最初の大会は2年前まで遡る。2年か。あっという間だったな。
最初はお試し気分でやっていたもののみんな次第に腕を上げ本気モードで挑むようになる。それに伴い賞金もだんだんと釣り上がり優勝した者には最下位から1万円を頂くという仰天プランまで飛び出したこともある。流石に猛反発を受けた。
学生生活を彩るイベントとしてこのFIFA大会は筆者にとってとっても大きなものとなった。
もしかしたら大会よりもむしろその雰囲気を楽しんでいたんじゃないだろうかという気持ちになることが最近多い。
FIFA大会という枠組みによって人が集まり、他愛もない会話が生まれ、時には一緒に食事をする。また前編で述べたとおり大会終了までに長時間を有するため必ずみんな泊まるのだ。だから布団も用意するしみんなが体を拭くタオルも用意する。コンタクトをつけている人には洗浄液を渡し大体歯ブラシ忘れる奴がいるからその人用に歯ブラシもいくつか用意しておく。
そんな準備も苦痛に思えないほどあの空間はすごく楽しかった。泊まりって楽しい!
みんなといれることがこんなにも楽しいなんて。
まだ終わりたくない。もっとやりたい。青春が終わらないでほしい。ふとそう思ってしまう。でも、誰も言わないんだろうな。
本当にありがとう!思い出をありがとう!
またどこかで遊べたらな
青春の1ページを彩ってくれてありがとう